第二言語習得理論(SLA)の誤り

第二言語習得の理論は、Second Language Acquisitionつまり、人間がどのように第二言語を学習するかの研究分野での理論や各種の仮説です。

第二言語習得の研究は言語学、社会言語学、心理学、神経科学や教育などの研究分野と密に関係しており、結果として第二言語習得の理論の多くは、そのどれかに起源を持っています。それぞれの理論は言語習得の過程に一定の光を当てるものとみなされていますが、そのどれかが包括的な第二言語習得の理論として全ての研究者から支持されているわけではありません。

1.白井恭弘氏のSLA

白井氏のSLAには次のように第二言語習得理論が書かれています。しかしここでは、いかに第二言語習得は母語であります。第一言語と違うかの説明となっています。

2.母語を基礎に外国語は習得される

ここでは言語の「転移」という言語学の言葉が出てきます。これは自分の母国語とこれから学ぼうとする外国語との間にどれだけ共通点があるかによって影響が異なるというお話です。英語とドイツ語であれば共通する部分が多いので想像がつきやすいが、日本語は別系統の言語なのでどうしても誤解が生じやすいのです。

また、日本語には主語がないことをはっきりと自覚して、外国語を学ぶ際には「なぜ外国語には主語が欠かせないのか。」とその文化的背景にも興味を持つべきだと書いています。

3.なぜ子どもはことばが習得できるのか

ここには臨界期の事が書かれています。アジア系移民について臨界期とも思えるようなデータが出たのだそうです。ただし、それはロシア人のほうが白人であります。ぶんコミュニティにとけ込みやすく、一方でアジア系の人はそういった点において不利であったことが理由なので「果たしてそれは生物学的な臨界期と言えるのだろうか。」と書いています。つまり、第二言語習得の問題は社会的な要因が大きいのではないか、という推測です。

4.どんな学習者が外国語学習に成功するか

ここでは外国語習得にあります。程度の個人差があると考えられる以上、達人の学習法をそのまま真似るような危険は冒すべきではない、と書かれています。そして、日本人が英語を学習するにおいて最大の障壁として「動機づけ」の弱さを挙げています。

また、ネイティブ・スピーカー信仰は捨てよ、とも釘を刺しています。完全主義に陥ってはいけないという現実的なアドバイスでもあり、また、日本人が心の底に隠し持っています。白人信仰への皮肉という感じでした。

5.外国語学習のメカニズム

それまで外国語に関してはインプット(新聞を読むなど)だけでアウトプットする機会に恵まれなかった人たちでも、その機会を得れば話し出すことがあるという例を挙げて、インプットの重要性を説きます。ただし、話せるようになった鍵は頭の中でのシミュレーションがなされているからなのだ、とも書かれています。

言語習得に必要な最低条件は、「インプット」+「アウトプットの必要性」ということになります。

さらに、さまざまなケースを紹介したうえで、いったんのまとめとして語学習得のために有効な方法はネイティブが使っています。例文をたくさん読み、覚えていくことだと結んでいます。これはおそらくコーパスに触れるべきだということなのでしょう。

6.外国語を身につけるために

日本の英語教育における「文法訳読方式」(英文和訳)は非常に効率が悪いとの主張がなされます。それはリーディングにおいて半分を日本語での和訳に費やしてしまうために読む文章の量が不足するため。そして日本語は英語とは構造が大きく違うため「悪い転移」が起きやすいので、こういった対象言語を学ぶときにはとにかく文章にたくさん触れるのが望ましく、そういった意味で現在の英語教育はあまり効率的ではないとのこと。

このSLAの説明には大きな誤りがあります。母語を基礎に外国語は習得されている訳ではありません。むしろ第二言語も第一言語も同じように習得されています。

そして「インプット」+「アウトプットの必要性」となっていますが、母語も第二言語もネイティブを真似て、フィードバックで矯正する方法で学習されえるべきです。するとインプットやアウトプットが重要ではなく、特徴を抽出して覚える事が大事になります。